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黄山で想い出したこと [上海雑記]

1990年に世界遺産登録された黄山は安徽省にあり中国でも有数の観光名所となっている。安徽省は、2000年に始まった国家政策である「西部大開発」で国家の重点的な開発投資の対象となった西部各省と既にかなりの発展を遂げた沿海部との狭間に位置し、当時でも中国有数の貧しさを代表する省の代名詞だった。今では外資企業の進出も始まっているが、当時はこれといった産業もなく痩せた土地と連なる山々のなかで貴重な稼ぎ頭が黄山観光だった。

その黄山に世界遺産登録数年後に家族で行ったことがある。上海から朝の便で省都合肥に飛び合肥からバスで黄山に到着した時にはもう午後になっていた。大小様々な峰を眺めながら歩くとそこは正に水墨画の世界だった。

すれ違う観光客の中に中国系米国人の一行がいたがその中の一人が私達とすれ違うたびに妻の顔をじっと見つめていることに気付いた。不思議に思いながらも深く考えずに頂上付近の宿泊場所で一泊し朝を迎え、出発間近の時間をロビーでたむろしていると再びその中国系米国人一行と出会ったが、相変わらず妻の方を時々観察しているので流石に奇異に思いその人に近づき話しかけてみた。その人は私の妻を昨日見かけた時は一瞬ドキッとしたくらいハワイ在住の知人に瓜二つだったのでどうしてここにいるのだろうか、いるはずないのにと半信半疑で何度も見ていたのだという。世界には自分に良く似た人が二人いるという話もあるがその話は本当かもしれないとそのとき思った。
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2日目は雨模様で天候に恵まれなかったので早めに山を降りて麓にある古村を訪問した。宋の時代に塩の行商で大儲けした一族の村という説明だったが今では古色蒼然とした古びた村だった。建物も朽ち行くままに任せているかのように苔むして昔日の栄華の跡は何も見出せなかった。中国の村々の入り口に必ずあると言っていい門がここにも立っていた。
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話は変わるが上海のいわゆる水商売の世界で働く女性はこの安徽省出身者が多かった。安徽省から出稼ぎに行く場合に最も近い大都会が上海ということなのだろう、どこの店でも出身は安徽省かと聞くと半分以上の確率で当たったものだ。因みに東京で働く中国女性に出身はどこかと聞くと大概の人は上海だという、例え安徽省出身だとしても。天津甘栗が栽培場所ではなく出荷される港(地名)から付けられたように。

或る日カラオケ店としてはまだ早い時刻の20:00頃に行ってソファで飲んでいた。隣に安徽省出身の女性が座り正面にママさんが座っていた。その時ドヤドヤと3-4人の公安が乱入してきた。私に向かってパスポート見せろといい、日本人だと確認すると私に帰れと命令。
何の違法なこともしていないのにと思い抗議しようと立ち上がるとママさんが私を抑えて何も言わずに帰って欲しいというので渋々退去した。

後日ママさんに聞いたところ私の隣に座っていた女性は公安に引っ張られていき、店もかなりの罰金を払わされたという。理由を聞くと中国の法律ではカラオケ店やレストラン等で女性がテーブルの向こう側に座ってサービスするのは良いが客の隣に座ってサービスを行うのは違法であるとのこと、公安に日頃から良い印象を与えておかないとこうして時々嫌がらせの手入れを受けるのだと言う。

この店としては袖の下とかしょば代のような不当な金銭を払うことに抵抗を覚え権力に屈しないために時々やられるのだと。可哀想なのは安徽省出身の女性で身元引受人がいないので1ヶ月近く留置されその間ママさんが毎日食事の差し入れを行い最後は身元保証人になって出してもらったとのこと。留置場の周辺には差し入れる弁当を売る屋台が多数あるようで差し入れの恩恵を受けられない人は一体どうなるのだろうか。

学歴や特別の技術もない農村戸籍の者は自由に都市には移動・転居できず、表面上は不法流入、不法就業になっているので当局はいつでも取締りを行うことが出来る。戸籍の問題は多くの矛盾のごく一部であろうが、13億の民を安定的に生活させ治安を維持し一党独裁体制を維持するためにどれだけのエネルギーを費やし、時には脅し時にはすかし、日夜苦心惨憺をしているのか想像に難くない。昨今の対外示威的行動やデモ発生状況を見るに付け、なかなかこの国も変わることが難しいなと改めて思う。

他方、変わるに変われない、決めるに決められない、ずるずると20年の長きに亘りよどんだ流れに身を任せっぱなしの島国もいよいよラストチャンスを迎えようとしているのだろうか・・・。
タグ:黄山
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